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- 2001年の発売以来、ロードホッパーはハーレーダビッドソンからエヴォリューションエンジンの供給を受けてきた。
1984年に登場し、99年にツインカムが登場するまで販売されたエヴォリューションモデル。ハーレーダビッドソンカンパニーはその後もリプレイス用としてエンジンのみを生産していたが、2015年をもって供給を終了。それゆえロードホッパーはS&S製のエヴォリューションユニットを搭載することとなった。なおスポーツスターエンジンを搭載するType2iシリーズは現在でもハーレーダビッドソンの純正ユニットを搭載している。
S&Sは1958年にスタートしたアメリカの老舗パーツメーカー。ハーレーダビッドソン用ハイパフォーマンスキャブレターの代名詞ともいえるスーパーB/Eを始め、ストローカーと呼ばれるロングストロークのフライホイールやビッグボアシリンダー、シリンダーヘッドなどのチューニングパーツを数多く生み出してきたが、現在はクランクケースを含めすべて自社製パーツによるコンプリートエンジンをラインナップ。世界中の名だたるカスタムビルダーがこぞって採用し、その信頼性は極めて高い。ちなみに2013年に登場したType5 SHOVELには、ハーレーダビッドソン社が1966年から83年まで生産し、現在でも人気の高いショベルヘッドエンジンのS&S製レプリカを搭載している。
世界で高い評価を得るS&Sエンジンだが、採用するにあたって日本国内で徹底的にテストランを重ね、ロードホッパー専用の仕様をS&Sにオーダーしている。
- 1957年に発売されたスポーツスターは、サイドバルブのKモデルからOHVへと変貌。そこに採用されたのがショベルヘッドだった。
それから遅れること9年、1966年に登場した第3世代のビッグツインは、スポーツスターで高い評価を得たショベルヘッドをパンヘッドのジェネレーター式クランクケースに搭載。ナックルヘッドから続くアイアンバレル=鋳鉄シリンダーを継承し、68年にはクランクケースがオルタネーター式に一新された。また80年には排気量が74キュービックインチ(ci)=1,200ccから80ci=1,340ccへと拡大されている。
ショベルヘッドという呼称の所以である有機的なデザインのロッカーケースや、アイアンバレルならではのクラシカルな外観と、荒々しいバイブレーションが織りなす強烈な個性はマニアの心を揺さぶり、生産終了から30年以上が経過してなお中古車市場で高い人気を誇る。
Type5 SHOVELに搭載されるS&S製ショベルエンジンの排気量は、純正後期の1,340cc(ボア・ストローク88.8mm×108.0mm)に対し1518cc(92.0mm×114.3mm)にスープアップ、さらに高トルク型のカムをセレクトし強靭なトルクを獲得している。これに合わせる変速機を4速より5速に変更することで、現代の道路事情にも適応する仕様に。また、ガスケット類も専用品とし信頼性も向上されている。
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- 「排ガス規制をクリアするにはインジェクション」と常識のごとく語られる現代においても、キャブレターならではのエンジンフィーリングを愛するライダーは決して少数派ではない。そんな人々のマニアックな声にこたえるべく、ロードホッパーのビッグツインモデルはキャブレターを採用している。
もちろん現在の排ガス規制に適合させるのは決して楽な作業ではない。ハーレーダビッドソン用として定評ある強制開閉式ミクニHSRキャブレターには、独自に開発したスロットルポジションセンサーを装備。
エンジン温度とCO2を感知するセンサー、クランク位置やギアポジションなどのデータを収集し、専用のECMにより 250rpm刻みで点火時期をコントロールすることで、排ガス基準値をクリアすることに成功した。
なおハーレーダビッドソン製スポーツスターエンジンを採用するTYPR2iには、純正:スロットルボディ+マイクロテックECUの組み合わせを採用している。
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- 欧州車のエンジンマネジメントで実績豊富な、イタリア・マイクロテック社のECUを採用。同社のノウハウとプロトが掲げる品質目標がリンクし、ロードホッパー専用のインクジェクションシステムは出来上がった。リジッドフレームの車両では唐突な駆動のショックをライダーが感じ取りやすく、特にデリケートなチューニングを要すが、徹底的なベンチテストと様々な条件下の実走で、ついにキャブレターと同等の自然なドライバビリティを手に入れた。無論、季節の変化や標高差にも対応し、あらゆる状況でVツインエンジンの味を堪能できるマシンに仕上がっている。
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- 通常、キャブ車の点火時期を決定しているのはエンジン回転数だ。回転数をもとにモジュールなどでタイミングを早めたり遅らせたりして効率よく燃料を燃やしている。しかしそれだけでは全開で加速中なのか、全閉で坂道を下っているのかが判別できない。そこでスロットル開度を検知するセンサーを増設すれば「スロットル開度=シリンダーが吸い込むガソリンの量」がわかるので、それに合わせた最適なタイミングで点火することができる。